シリーズ「あおば子育て事情」は江口 寛さんの文です。彼は30年来の私・大貫の友人です。私の市政ファイル407号からの転載です。
先週、木曽路の旅をしました。
私事ですが、恩師・深井一郎先生(金沢大学名誉教授)が亡くなりました。師の最後の仕事が、鶴彬(つるあきら:1909~1939年)を世に出すことでした。
鶴彬は川柳界の多喜二というべき人ですが、それほど有名ではありません。
今夜は、鶴の川柳を味わいつつ、恩師をしのばさせていただきます。
皺に宿る淋しい影よ母よ 15歳
可憐なる母が私を生みました 16歳
都会から帰る女工と見れば病む 18歳
高く積む資本に迫る蟻となれ 同
食堂があっても食えぬ失業者 20歳
重役の賞与となった深夜業 同
しもやけのクリーム買って飯を抜き二本きりしかない指先の要求書 同
凶作を救えぬ仏を売り残し 26歳
吸いに行く 姉を殺した綿くずを 同
修身にない親孝行で淫売婦 27歳
銃先で奪った美田の移民村 同
母国掠め盗った国の歴史を復習する大声 同
ユダヤの血を絶てば猛犬の血が残るばかり 同
春を待つ地熱に続く休火山 同
暁を抱いて闇にいる蕾 同
枯れ芝よ団結して春を待つ 同
万歳とあげて行った手を大陸において来た 28歳
手と足をもいだ丸太にしてかへし、胎内の動きを知るころ骨がつき 同
泉鏡花金沢市民文学賞受賞
『反戦川柳作家 鶴彬』
(機関紙出版)による