シリーズ「あおば子育て事情」は江口 寛さんの文です。彼は30年来の私・大貫の友人です。私の市政ファイル306号からの転載です。
「育鵬社」の歴史と公民の教科書が採択された8月4日の教育委員会の論議で、もうひとつ気になることがあった。『中学国語』の教材に「暗く後ろ向きのものが多い、もっと希望が持てるような作品がほしい」と言う意見だ。
『碑―広島二中全滅の記録』(東書)『大人になれなかった弟たちに……』(光村)『字のないはがき』(東書、光村)など、戦争の悲惨さを描いた作品が排撃される怖れを感じた。
『大人になれなかった…』で、筆者の米倉斉加年さんは、
「十日間くらい入院したでしょうか。ヒロユキは死にました。病名はありません。栄養失調です…。僕はひもじかったことと、弟の死は一生忘れません」
と結んだあと、「あとがき」(教科書にはない)で、
「戦争ではたくさんの人たちが死にます。そして老人、女、子どもと弱い人間から飢えて死にます。
私はそのことをわすれません。でも、もっとわすれてはならないことがあります。私の弟が死んだ太平洋戦争は、日本がはじめた戦争なのです。そして朝鮮、韓国、中国、東南アジアの国々、南方諸島の人たちをどんなに苦しめ悲しませたことでしょう。それは私たちが苦しみ悲しんだ以上のものです。
そのことを私たちはわすれてはならないと思います。そのことをわすれて、私たちの平和は守られないでしょう」
と、付け加えている。